土をつくる:堆肥(コンポスト)について 手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」



土をつくる
〜堆肥・コンポスト〜
 
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〒622-0291京都府船井郡
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midori@journeytoforever.org

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〜100億人分の食糧をまかなえる世界で
なぜ8億の人が飢えるのか〜

土をつくる
〜堆肥・コンポスト〜

堆肥やコンポストはよく「自然によるリサイクル」と言われる。でも自然界のどこを探しても、有機物が適切な炭素:窒素比で適切な水分と空気が含まれるように注意深く積み上げられ、摂氏50〜60度の高温で発酵されてもうもうと水蒸気を吹き出している堆肥塚は存在しない。ましてや、熊やゴリラがフォークを片手に堆肥塚を積んだり切り返したりする・・・なんて姿は絶対見られない。自然は堆肥をつくらない。自然は地表にマルチをしいて、長い時間をかけて少しずつ腐植土をつくっているだけ。

もちろん、堆肥づくりやコンポストは自然的なリサイクルの方法とは言える。機械や合成化学物質に頼らず、自然の力を利用しているから。だけど、堆肥を作るには人の手が必要だ。

機械や化学物質や、それこそ遺伝子組み換え生物や核弾頭さえも「自然の力を利用している」と言えないこともない。実際、自然の力がなかったらこれらの物も開発できなかったし動きもしないのだから。だからといってこういう物を「自然的」とは言わない。

「手づくり企画」の農園では、堆肥たっぷりの土にたくさんの野菜が元気に育っている
自然的というのは、自然が「良し」と認めていることだと思う。じゃあ、自然は人間が堆肥を作ることを認めているのか? それともこれも自然の営みを乱す人間勝手な行為だろうか?

自然は何を望んでいるのだろう。注意深く観察してみると、自然はあの手この手で腐植土をつくり表土を守ろうとしていることがわかると思う。複雑なしくみや、一見関係ないようなしくみも総動員して、自然はいつも有機物を分解し腐植土をつくる土壌微生物が活躍するのを支援している。肥沃な表土がなければ生物の多くは生存できない。だから自然は表土をつくり、表土を守ることを最優先している。

「シャベル一杯の耕土には、アマゾン熱帯雨林の地上部に生活するあらゆる生物種の数より多い種類の生物が含まれている。
 地面は一見動かない固体のように見えるが、実はかなりの空気が出入りしている。肥沃な耕土の地上20センチに含まれる空気はほぼ1時間ごとにすっかり入れ替わっている。」
- Soil Factoids, US National Soil Survey Center

有機物の炭素:窒素比率と水分と通気性を考えながらフォークを使って堆肥塚を積み、摂氏50〜60度まで発酵させて堆肥を作ることにより、自然が100年かけてつくるのと同じ量の腐植土を人間は1年間で作ることができる。そして自然はそれを認めている。自然がうれしいときは作物を元気に育て、堆肥を作った人間の労を報いてくれる。作物が病気や害虫に襲われたらそれは自然が何か不満な証拠。試しにやってみたら? 堆肥作りはだれでにでもできるから。

「自然の意に添った働きを人間が行ったとき、人間は自然から最高の恩恵を授かることだろう。」- 易経

自然が堆肥をつくる例外:
自然は堆肥をつくらないと言ったけれども、小さな例外はある。オーストラリアには、巣の中に有機物を注意深く集めて自分の糞と混ぜ、発酵して暖かくなった所に卵を生む鳥がいる。かみ砕いた木材を巣の中に積み重ね、唯一の食べ物である特殊な菌類を育てるシロアリもいる。これらも堆肥つくり言えるけど、腐植土を大量につくるのとはちょっと違う。

堆肥と有機農

有機農の最重要課題は土の肥沃度を管理すること。作物に肥料を与えるのではなく、土を肥やす。そうすれば肥沃な土が元気な作物を育ててくれる。複雑な土壌管理も一言にまとめられる「より質の高い堆肥をより多くつくること」

「有機農で一番大切な仕事は、良質の堆肥を作ることだ。数々の農場で相談されたほとんどの問題は、より質の高い堆肥を作ることで解決できるものだった。」- Elliott Coleman, The New Organic Grower

命あるものはやがて死ぬ。そしてその身体は土に戻り、新しい命の誕生のために使われる。これが自然界の循環の法則。有機農を手がける人たちは堆肥を作ることにより、この循環の最後の部分を強化・促進する。有機物の残骸を上手く分解させることにより、土にとって最高の食事を用意するのだから。こうして土が生き返り、耕地は肥沃な土と生産力を維持することができる。

成長と腐植の循環は、よく車輪の動きに例えられる。生物の誕生と成長は主に日の当たる部分で行われ、腐植と分解は地中で行われて次の生命の誕生を調える。成長の部分だけが加速されると車輪は壊れ、自然のバランスが崩されて病気や害虫が発生する。堆肥作りはこの成長と腐植の車輪の、腐植の側を促進することにより車輪全体の回転を速める。車輪全体が速く回れば、作物の成長も促進される。

「現代農業は作物の成長を加速しようとしたが、腐植の部分を加速する努力はほとんどされなかった。生命の車輪のバランスは崩され、農の営みのバランスが損なわれた。その傷跡を化学肥料で埋め合わせようとし、その結果世界の耕土は疲労し荒れ地となったか汚染されている。耕土の修復と肥沃度の管理は世界的課題となっている」- Sir Albert Howard, Farming and Gardening for Health or Disease (The Soil and Health), Faber and Faber, London, 1945

「単純すぎに聞こえると思うけど、堆肥を作ることが畑のあらゆる問題の万能薬。より良い堆肥をより多く作ること。 害虫の被害? 堆肥たっぷりで育った元気な作物に虫は付かない。 雑草? それも堆肥がマルチと一緒に解決してくれる。もっと効率的な雑草対策は、よく肥えた永久耕地(permanent raised beds)に作物をかなり詰めて植え、作物自体が地表に湿った層を作り「生きたマルチ」となること。雑草も生えてこないけれど、この方法を成功させるには質の高い堆肥がたっぷりいる」と堆肥づくりに基づいた有機農を15年来続けてきたキースは言う。

「水が足りない? 日照り? それも堆肥が土の水分保持量をぐんと大きくして解決してくれる。


キースの背丈まで伸びた村一番の草むら
「水はけが悪い? それも堆肥で解決できる。前に僕が香港の農村に住み込んで中国農業の黄昏を調査したとき、長年灰を加えすぎて堅い粘土層ができてしまった田んぼがあった。4ヶ月雨が降らなかったのに水がたまって下等な草しか生えない、どうしようもない土地だった。僕はそこにサンヘンプという草を植え、堆肥をたっぷり与えてその畑を修復した。

「村の人たちは僕のことをクレージーだって笑ったよ。畑に草を植えたんだから。でも、サンヘンプの根は粘土層を壊しながら地中深く伸びて、豆科だから土に窒素を取り込み、おまけに最高級の家畜の餌と堆肥の材料をたっぷり収穫できた。その後はどんな作物でも育てられる立派な畑ができたよ」

役立ち物の草、サンヘンプ(クロタラリア)に関するホームページ
Crotalaria juncea (James A. Duke, 1983, Handbook of Energy Crops, Purdue)
http://www.hort.purdue.edu/newcrop/duke_energy/Crotalaria_juncea.html

世紀最悪の干ばつにも有機農法は高収穫
ロデイル研究所からの報告 1999年11月8日
今世紀最悪の干ばつによりアメリカ中の農家が膨大な被害を被っているときに、ペンシルベニアにあるロデイル試験農場では大豆の大収穫を祝っていた。条件が同じ場所に、一方は慣行農法、一方は有機農法で土壌管理された畑を用意し、大豆の高生産・集約栽培を行った。結果として、慣行農法の畑からは1エーカーあたり16ブッセル、有機農の畑からは30ブッセルの大豆が収穫された。有機農法による土壌管理が干ばつでも被害を押さえることを証明した。
http://rodaleinstitute.org/global/11_9_99.html


「我々がアメリカ、ベトナム、中国で行った実験結果は、完熟堆肥を用いれば葉・枝・根のいずれにおいてもあらゆる種類のバクテリアや菌類による病害を抑制できることを明確に示した。

「ベトナムでは Greening Disease という病気が柑橘類に広まり、アジア各地やアメリカで大被害をひきおこしていた。対処法は木を切り、土を焼き、別の作物を植えるしかない。そこへ我々が実験用の完熟堆肥を施すと病気にかかった木が再び葉を茂らせ、花を咲かし、感染していない果樹を実らせた。同じ完熟堆肥で農薬なしに病害ゼロの稲を育てることもできた。アリゾナ州とアーカンソー州の実験では、同じ完熟堆肥が綿花の根の病気、rot blight pythium、フザリウム属凋枯症、線虫などの病害を防いだ。中国では病害の被害を受けた畑で完熟堆肥を使ってジャガイモを栽培すると、まったく感染していない芋が収穫できた。

「成功例はまだまだ山ほどある。この結果のポイントはバランスのとれた土壌微生物圏が病害抑制として機能しているということだ。現代農業がこのバランスを壊してしまったため、病害の問題を引き起こしてしまった」
-- Phil Fredericks http://www.ecticompost.com
("WASTENOT Organic Waste Collection, Processing, Composting" list, 5 Jan 2001)

関連ページ:
栄養からっぽの野菜たち(有機農野菜と市販野菜の栄養度の違い)
栄養からっぽな野菜たち (No sugar)」(堆肥と栄養の関係の物語)

堆肥・コンポストってなに?

★日本では「堆肥」と「コンポスト」がいろんな用法で使われ、それぞれ違うイメージを持つようになっていますが、ここでは同義語として使っています。

畑の片隅でハエが群がる臭い汚い穴・・・それは堆肥のあらぬ姿。上手に管理された堆肥塚はきれいなもの。悪臭もないし、ハエもなし。生ゴミがあってもちゃんときれいに処理できる。


灰色に疲労した村の畑
堆肥もコンポストも、有機物が単に腐った物体ではない。堆肥を作る過程には微生物学が最も複雑に応用されている。堆肥1グラムには約200万の微生物が含まれ、何億もの微生物がお互いに食べたり食べられたりしながら複雑な生態系を作り上げている。上手に積まれた堆肥は発酵する過程で雑草の種を枯らし、人間や野菜への病原菌をほとんど殺してしまう。こんな現象は落ち葉がたまっただけの地面では起きていない。

土に施された堆肥は、土の中の複雑な生態系バランスを調整する。土の中では1種類の作物に対して何十種類もの病原菌がとりつこうとねらっている。その病原体の1つ1つの動きを押さえ込むためにはそれぞれ12〜15種類の制御微生物が必要。つまり作物1つが健康に育つためには、何百種類もの微生物がバランス良く存在している必要がある。堆肥はこの膨大な数の複雑に入り組んだ微生物の生態系を、作物にとって一番適した形にきれいに整える役割を担っている。


堆肥とサツマイモで修復した同じ場所の土
堆肥と土壌微生物と作物の健康について、もっと詳しい解説が「Appropriate Technology Transfer for Rural Areas (農村への適正技術紹介:ATTRA)」のホームページにまとめてある。

「土壌微生物の大切な役割の一つに植物の養分吸収を手助けすることがある。ある微生物は有機物から窒素や硫黄、リン、微少ミネラルを取り出し、植物が吸収できる形に変えている。別の微生物は土壌ミネラルを分解して、カリウム、リン、マグネシウム、カルシウム、鉄分を取り出し植物にわたす。また他の微生物は天然の成長促進ホルモンを作り植物の根の成長を促す。

「いく種類かのバクテリアは豆科の植物の根に窒素を固定するが、他のバクテリアは独自に窒素を固定をしたりする。土の状況に合わせてアンモニア・窒素・硝酸塩を作り替えるのもバクテリアの仕事。他にもいろんな微生物が養分を植物の根が吸収しやすい形にして提供したり、土壌の構造を調えたり、病原菌が植物の根に感染するのを防いだり、土の毒素を中和したり、様々な方法で植物の生長を根本から支えている」

バクテリアの他にもミミズ、ヤスデ・クモ・昆虫などの節足動物、菌類、放線菌、藻類、原生動物、線虫など「小さいバクテリアから大きなミミズや昆虫まで、土の中の生物は互いに複雑に関係しながら全体の土壌生態系を形成している。肥沃な表土1エーカーには、約4トンの土壌微生物が生活していると言われている」
http://www.attra.org/attra-pub/soilmgt.html#organisms

科学的な堆肥作りの技術は1930年代に開発された。堆肥作りそのものはずっと昔から行われており、スパニッシュ・アラブは堆肥作りの名手だったし、中国や日本の農民はあらゆる有機物を土に戻してきた。でも20世紀初頭に行われた科学的な研究の積み重ねにより、だれもが比較的簡単に修得できる堆肥作りの知識と技術が確立され、それが世界に広まっている。

堆肥作りの方法はこちら


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