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土をつくる
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「手づくり企画」の農園では、堆肥たっぷりの土にたくさんの野菜が元気に育っている |
「シャベル一杯の耕土には、アマゾン熱帯雨林の地上部に生活するあらゆる生物種の数より多い種類の生物が含まれている。
地面は一見動かない固体のように見えるが、実はかなりの空気が出入りしている。肥沃な耕土の地上20センチに含まれる空気はほぼ1時間ごとにすっかり入れ替わっている。」
- Soil Factoids, US National Soil Survey Center
有機物の炭素:窒素比率と水分と通気性を考えながらフォークを使って堆肥塚を積み、摂氏50〜60度まで発酵させて堆肥を作ることにより、自然が100年かけてつくるのと同じ量の腐植土を人間は1年間で作ることができる。そして自然はそれを認めている。自然がうれしいときは作物を元気に育て、堆肥を作った人間の労を報いてくれる。作物が病気や害虫に襲われたらそれは自然が何か不満な証拠。試しにやってみたら? 堆肥作りはだれでにでもできるから。
「自然の意に添った働きを人間が行ったとき、人間は自然から最高の恩恵を授かることだろう。」- 易経
自然が堆肥をつくる例外:
自然は堆肥をつくらないと言ったけれども、小さな例外はある。オーストラリアには、巣の中に有機物を注意深く集めて自分の糞と混ぜ、発酵して暖かくなった所に卵を生む鳥がいる。かみ砕いた木材を巣の中に積み重ね、唯一の食べ物である特殊な菌類を育てるシロアリもいる。これらも堆肥つくり言えるけど、腐植土を大量につくるのとはちょっと違う。
有機農の最重要課題は土の肥沃度を管理すること。作物に肥料を与えるのではなく、土を肥やす。そうすれば肥沃な土が元気な作物を育ててくれる。複雑な土壌管理も一言にまとめられる「より質の高い堆肥をより多くつくること」
「有機農で一番大切な仕事は、良質の堆肥を作ることだ。数々の農場で相談されたほとんどの問題は、より質の高い堆肥を作ることで解決できるものだった。」- Elliott Coleman, The New Organic Grower
命あるものはやがて死ぬ。そしてその身体は土に戻り、新しい命の誕生のために使われる。これが自然界の循環の法則。有機農を手がける人たちは堆肥を作ることにより、この循環の最後の部分を強化・促進する。有機物の残骸を上手く分解させることにより、土にとって最高の食事を用意するのだから。こうして土が生き返り、耕地は肥沃な土と生産力を維持することができる。
成長と腐植の循環は、よく車輪の動きに例えられる。生物の誕生と成長は主に日の当たる部分で行われ、腐植と分解は地中で行われて次の生命の誕生を調える。成長の部分だけが加速されると車輪は壊れ、自然のバランスが崩されて病気や害虫が発生する。堆肥作りはこの成長と腐植の車輪の、腐植の側を促進することにより車輪全体の回転を速める。車輪全体が速く回れば、作物の成長も促進される。
「現代農業は作物の成長を加速しようとしたが、腐植の部分を加速する努力はほとんどされなかった。生命の車輪のバランスは崩され、農の営みのバランスが損なわれた。その傷跡を化学肥料で埋め合わせようとし、その結果世界の耕土は疲労し荒れ地となったか汚染されている。耕土の修復と肥沃度の管理は世界的課題となっている」- Sir Albert Howard, Farming and Gardening for Health or Disease (The Soil and Health), Faber and Faber, London, 1945
「単純すぎに聞こえると思うけど、堆肥を作ることが畑のあらゆる問題の万能薬。より良い堆肥をより多く作ること。 害虫の被害? 堆肥たっぷりで育った元気な作物に虫は付かない。 雑草? それも堆肥がマルチと一緒に解決してくれる。もっと効率的な雑草対策は、よく肥えた永久耕地(permanent raised beds)に作物をかなり詰めて植え、作物自体が地表に湿った層を作り「生きたマルチ」となること。雑草も生えてこないけれど、この方法を成功させるには質の高い堆肥がたっぷりいる」と堆肥づくりに基づいた有機農を15年来続けてきたキースは言う。
「水が足りない? 日照り? それも堆肥が土の水分保持量をぐんと大きくして解決してくれる。
キースの背丈まで伸びた村一番の草むら |
「我々がアメリカ、ベトナム、中国で行った実験結果は、完熟堆肥を用いれば葉・枝・根のいずれにおいてもあらゆる種類のバクテリアや菌類による病害を抑制できることを明確に示した。
「ベトナムでは Greening Disease という病気が柑橘類に広まり、アジア各地やアメリカで大被害をひきおこしていた。対処法は木を切り、土を焼き、別の作物を植えるしかない。そこへ我々が実験用の完熟堆肥を施すと病気にかかった木が再び葉を茂らせ、花を咲かし、感染していない果樹を実らせた。同じ完熟堆肥で農薬なしに病害ゼロの稲を育てることもできた。アリゾナ州とアーカンソー州の実験では、同じ完熟堆肥が綿花の根の病気、rot blight pythium、フザリウム属凋枯症、線虫などの病害を防いだ。中国では病害の被害を受けた畑で完熟堆肥を使ってジャガイモを栽培すると、まったく感染していない芋が収穫できた。
「成功例はまだまだ山ほどある。この結果のポイントはバランスのとれた土壌微生物圏が病害抑制として機能しているということだ。現代農業がこのバランスを壊してしまったため、病害の問題を引き起こしてしまった」
-- Phil Fredericks http://www.ecticompost.com
("WASTENOT Organic Waste Collection, Processing, Composting" list, 5 Jan 2001)
★日本では「堆肥」と「コンポスト」がいろんな用法で使われ、それぞれ違うイメージを持つようになっていますが、ここでは同義語として使っています。
畑の片隅でハエが群がる臭い汚い穴・・・それは堆肥のあらぬ姿。上手に管理された堆肥塚はきれいなもの。悪臭もないし、ハエもなし。生ゴミがあってもちゃんときれいに処理できる。
灰色に疲労した村の畑 |
堆肥とサツマイモで修復した同じ場所の土 |
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