森と人を救うソーラークッカー: 手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」



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連絡先
手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」
http://journeytoforever.org/jp/
〒622-0291京都府船井郡
丹波町郵便局 私書箱6号
キース・アディソン (英語)
平賀緑 (日本語&英語)
midori@journeytoforever.org

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食糧問題・食料問題のページ
〜100億人分の食糧をまかなえる世界で
なぜ8億の人が飢えるのか〜

太陽熱で料理して世界の森を守ろう
〜太陽熱調理器 ソーラークッカー

料理は台所のコンロの上でするものだと私たちは思いがち。だけど世界人口の約半分の人たちは焚き火でご飯を炊き、世界で消費されている木材の半分近くが燃料として燃やされている。でも世界の森林資源はますます乏しくなり、すでに20億人もの人たちが薪不足で困っている。

途上国では毎年1,500万ヘクタール以上の森が消滅している。世界で人口1人に対する森林面積の割合は、1960年の半分以下にまで減ってしまった。


南アフリカのトランスカイでコサ族の女性を訪ねたとき。家の中で焚き火を起こし煙が家中に立ちこめていた。1997年
この問題の明快な解決策は、木を植えて森を増やすこと。だけど現実にはこれがなかなか進まない。充分な森さえあれば、地元の人たちが薪を使うことはむしろ持続的な森林維持につながる。自分たちにとって大切な森を村人たちは代々管理して守ってきた。でも今は外部から来た人たちが森を伐採し、植林計画はなかなか進められず、計画があってもなかなか成功しない。森が少なくなった危険地帯に余分な人たちも追い込められて一緒に薪を燃やすから、少ない森がますます荒らされてしまう。木を燃やすなと言っても、他のエネルギー源の設備は整っていないし、設備があったとしても貧しい人たちにはお金がない。

そうこうしている間にも、森林破壊は肥沃な表土を洗い流し、気候も変えて洪水と干ばつを繰り返すようになり、環境をますます破壊し、貧困と飢餓をますます増やしている。

「一番良いのは20年前に木を植えていることだった。
二番目に良いのは、いま木を植えることだ」--詠み人知らず

一番の犠牲者

薪不足の一番の犠牲者は女性と子供たちだ。

「不足する薪を探して集めてくることが、女性と子供たちから時間と労力と健康を奪っている。近くに木がないため、女性や子供たちはより重い薪をより遠い距離背負うため、背骨の損傷や子宮脱出症の危険にさらされている。特に女の子はしばしば学校に行く代わりに母親と一緒に薪集めにかり出されるため、教育の機会を奪われている。薪がないため農作物の残り物や動物の糞まで燃やそうとするため、家畜の餌が減らされたり畑土に還元すべき養分が奪われ、食糧不足につながる。しかもこれらの燃料は効率的に燃えないため、不完全燃焼から家族の呼吸器系傷害をも引き起こしている」 From "Forest Futures: Population, Consumption and Wood Resources" by Tom Gardner-Outlaw and Robert Engelman, Population Action International, 1999
http://www.populationaction.org/why_pop/forest/forest_factsheet.htm

改善への糸口のひとつ

単純化して解決できないのが環境と開発問題。薪不足と森林破壊の問題にもいろんな事情が複雑に絡んでいる。だけど何百万本もの木を救い、安全できれいな飲み水を提供し、煙も出さず、女性と子供たちを薪集めの重労働から解放する、安くて簡単な改善策のひとつとして、段ボールでも作られる太陽熱調理器(ソーラークッカー)が注目されている。


香港の日差しを受けてご飯を炊く「CookIt」ソーラークッカー
ソーラークッカーを使うと、世界の薪使用量を36%減らすことができ、ユニセフの推測によると年間3億5,000万トンの木材が燃やされずに済むという。一家族につき毎年500キログラムの木材が節約されるため、何百万本もの木が救われることになる。

「人類が宇宙に進出する一方、ますます多くの人たちが貧困の底なし沼に引きずり込まれている。その差は広がるばかりだ。途上国の数十億の人たちがソーラークッカーを作り使い始めたら、この差を少しは縮めて逆転することができると思う」From "Balancing the Scales" by Bill Sperber
http://solarcooking.org/balance.htm
「ソーラークッカーで世界の不均衡を正す」日本語のまとめはこちら

火の無い所に煙は立たぬ

かまども煙突もない屋内で薪を燃やすと不完全燃焼の煙が立ちこめ、この煙が呼吸器官障害を起こし年間少なくとも500万人の子供たちを死亡させている。ソーラークッカーで料理すれば煙も出ないし汚染もない。


同じソーラークッカーがエチオピアでも活躍中
「薪の非効率的な燃焼による有害な煙に一番さらされているのは女性と子供たちだ。中国では料理の煙がタバコを吸わない女性の肺ガン罹病率を高めていると警告されている。ガンビアでは、焚き火で料理する母親に背負われた5歳以下の女の子が肺ガンにかかる率は、そうでない子供たちの6倍との調査結果も報告されている」 From "Cooking smoke: a pervasive killer in developing countries" WIN News, 1 January 1998
http://solarcooking.org/cookingsmoke.htm

安全できれいな飲み水の確保

世界保健機関(WHO)によると、不衛生な飲み水からの感染が、世界中の罹病原因の80%を占めるという。ソーラークッカーを使えば水を摂氏65度の温度で6分間加熱する低温消毒ができるため、病原菌のほとんどを退治することができる。

「途上国の農村部の60%、都市部の23%の人たちが安全な飲み水を確保できていないとユニセフは推測している。飲み水を沸騰させることが奨励されるが、燃料がないため実行できない人が多い」From "A summary of water pasteurization techniques" by Dale Andreatta
http://solarcooking.org/solarwat.htm

女性が助かると、みんなが助かる

ソーラークッカーを活用して必要な薪の量を減らすことができれば、数百万人もの女性が毎日数時間(もしくは毎週数日間も)薪探しに費やさなくてすむ。女性たちは節約できた時間で家族の世話をみたり、家族が食べる野菜や家畜を育てたり、教育を受けたりすることに使うことができる。女性が教育の機会を得ることは人口抑制の「鍵」だ。

「一日中歩いてようやく木のある所に着き、二日目に薪を拾い集め、三日目は重い荷物を担いで家まで薪を運ぶのに費やされる」アフリカ・チャドからの報告

上手に作られたソーラークッカーは、曇りの日でもかなりの料理ができる。


ネパールの女性たちが作った竹かごのソーラークッカー
すでに50万個以上のソーラークッカーが世界で使われている。中国やインドで特に多く使われ、その他の国でも様々な団体やプロジェクトがソーラークッカーを人々に紹介している。ユニセフはソーラークッカーを2億個まで普及できると推測している。

いらなくなった段ボール箱を使ってソーラークッカーを作るのはとても簡単。デザインによっては小学生が1時間足らずで作られる物もある。この簡単な道具がアフリカの難民キャンプで大活躍している。

工夫の余地もまだまだたくさんある。私たちの身の回りには山ほどある段ボール箱も途上国ではなかなか見つからない。竹かごから素敵なソーラークッカーを作っている人たちもいるけれど、どんな材料を使えば効率的な調理器を簡単に安く作れるか? アルミホイルが無かったらどうすれば良い? もっと弱い光でも短時間に料理するには? もっとたくさんの料理を一度に作るには? 学校で家庭で、お金をかけず手間をかけず、効率的なソーラークッカーを作るにはどうすれば良いか工夫して、世界中で活動しているNGOの人たちにアドバイスしてあげよう。たった一人のアイデアが世界でたくさんの人と森を守る役に立てるのだから。

他の改善策

ソーラークッカーは燃料として薪を補完することはできても、完全に薪を置き換えることはできない。他のエネルギー源としてバイオガスやバイオ燃料、風力・水力・太陽電池なども考えられてはいるけれど、薪に代わるエネルギー源が貧しい人たちにまで行き渡るには時間がかかるしお金もかかる。それに薪には薪なりの長所もあり、地域によっては薪こそが持続可能な理想的な燃料源である場合も多い。

地域の外から買ってこなければならない化石燃料と違い、薪の利用は上手に管理すれば森林を守り、地元で継続的に生産でき、地元の人々に職を与え、効率的に燃やせば気候変動にも影響しない。燃焼で発生した二酸化炭素は、木が育つときに再利用されるから。

でも多くの場合、薪は非効率的に燃やされ、多くのエネルギーが無駄にされ、不完全燃焼が煙汚染と気候変動を引き起こしている。

薪を燃料として使う人の半分くらいは、適切なかまどや煙突を持っていない。もっと多くの人がもっと効率的なかまどやストーブを使うようになれば、無駄が減り、必要な薪の量が減り、切り倒される木の数が減り、途上国の人たちの健康改善と世界の環境改善につながる。

木炭も煙を出さない効率的な燃料と言われている。だけど木炭を作る過程はしばしば非効率的で、多くのエネルギーが無駄にされている。世界中で多くの人たちが、安い材料でだれもが作れる効率的なかまどの普及や、効率的でエネルギーを無駄にしない木炭の作り方を研究している。だけどまだまだ改善の余地がたくさんある。

これらの問題の根源、そしてその他の開発問題の根源には、蔓延する貧困の泥沼が横たわっている。いま、貧困は前代未聞の速さで、森が消滅するよりも速く砂漠が広がるよりも速い速度で広がりつつある。不平等な経済システムの横行がもっともっとたくさんの人たちを飢餓と貧困に追いつめているからだ。*

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* 今日世界では少なくとも10億人がお腹をすかせている。栄養が足りないと身体の健康も頭脳の成長も妨げられる。一方では過剰農産物の処理が政府の頭痛の種となり肥満で悩む人もたくさんいる。

1999年の国連人間開発報告は、グローバライゼイションの影響と経済的統合の増加が、あらゆる方面で富む人をより豊かに、貧しい人をより貧しくしていると報告した。

国連の統計は金持ちと貧しい人のギャップが広がっていることを克明に現している。
・過去9年間に、金持ち人口20%と貧困人口20%の所得の差は、60:1から74:1に拡大した。
・世界の大富豪200人の財産は、世界人口41%の人たちの所得の合計を上回っている。(BBC World News, July 12, 1999)

世界の金持ち5分の1の人たちが物とサービスの86%を消費し、貧しい5分の1の人たちは1.3%しか消費していない。 (New York Times, 26 September, 1998, Week in Review)

世界の30億人は1日2米ドル以下で生活し、世界の10億人は1日1米ドル以下で生活している。(World Bank)


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